解説:

久遠寺 涼子 [くおんじ りょうこ]

久遠寺医院、久遠寺 嘉親久遠寺 菊乃の長女。久遠寺 梗子の姉。
子供のころから体が弱く、主治医である小児科医の菅野 博行から催淫剤(ダチュラ)を投与され性的虐待を受けていた。その性的虐待による倒錯した経験が蓄積して、多重人格者となっていた。
藤野 牧朗が書いた梗子宛の恋文を関口 巽が間違って涼子に渡してしまったことがきっかけで、涼子の別人格“京子”が発現、牧朗が学生時代に久遠寺 梗子だと思って恋愛を重ねていた相手は、涼子の中の別人格“京子”のほうだった。結果、牧朗の子を妊娠するが、出産した子は無頭児だったため生後すぐに母・菊乃の手で処分され、そのショックから更なる別人格“久遠寺の母”が発現する。(『久遠寺の母=子供を見ると石で打ち殺す』という意味を持つ)
以降『“京子”が攫って“久遠寺の母”が始末する』という人格交換の図式で、涼子は久遠寺医院で出産された赤子を次々に攫っては殺しホルマリン漬けにしていた。この不幸な人格交換は出産後の不安定な状態で二度程起こっただけだったが、梗子と結婚した藤野 牧朗が久遠寺家に入ってきたことで再発、原澤 伍一の子を含む3件の『赤子失踪事件』が起こる。
義弟となった牧朗が妹・梗子との大喧嘩の末に脇腹を刺され、書庫に逃げ込んだところを“京子”として居合わせる。“京子”は愛する牧朗を助けようとするが、牧朗が涼子を見て発した「母様」という言葉がきっかけで“京子”から“久遠寺の母”に人格が入れ替わり、牧朗を石で打ち殺してしまった。
事件の全容が解明されるや、たまたま久遠寺医院に居た赤子を攫って逃走しようとするが、それを取返そうとした母・ 菊乃を揉み合いのうち殺害、その後を追ってきた関口に赤子を返すと自らも飛び降りて死ぬ。
牧朗の捜索を涼子が榎木津 礼二郎に自ら依頼しに行った件については、『涼子の中に存在する人格による内部告発だった』と、中禅寺 秋彦は推測している。

参照作品:『姑獲鳥の夏』
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