解説:

柚木 陽子 [ゆずき ようこ]

天才外科医・美馬坂 幸四郎とその妻・美馬坂 絹子の娘で、柚木 加菜子の(戸籍上は姉となっているが)実の母親。
父である幸四郎を愛し、病気によって身も心も醜くなっていく母・絹子から(それでもなお母を愛する)父を奪いたいと思い続け、そういう邪な気持ちから幸四郎を誘い加菜子を身籠る。
横浜の劇場でもぎりをやっていた17歳当時、(加菜子を身籠っていながら)柴田財閥の跡取り・柴田 弘弥との駆け落ちするが失敗。その後は柴田 耀弘との取り決めにより柴田からの資金援助で細々と暮らしていたが、ひょんなことから美波 絹子という名の人気女優になると、美波 絹子=柚木 陽子であると気づいた須崎に「加菜子の出生の秘密を加菜子本人にバラす」と強請られるようになり、恐喝から逃れる為に女優を突然引退して武蔵野に隠棲していた。
武蔵小金井駅のホームから転落し列車に轢かれた瀕死の娘・加菜子の命を救う為、父である美馬坂博士を頼って美馬坂近代医学研究所へ加菜子を転院させるが、美馬坂が施した加菜子の延命装置を動かし続けるには莫大なコストがかかった。その問題は加菜子が柴田 耀弘の遺産を相続することで解決すると思われたが、耀弘の容態が持ち直したことから(遺産を相続するまで)装置を動かす為に当座の資金が必要になってしまい、加菜子を何とか生かしたい陽子は、加菜子の身代金詐取を目的とした狂言誘拐を思いついて脅迫状まで作ったものの、実行には移せないでいた。ところが、その脅迫状が木場 修太郎に見つかってしまったことから、成り行き上、脅迫状は“誘拐予告状”になってしまう。
加菜子の延命を諦めようとしていたところ、須崎の甘言(須崎独自の生命維持法による延命法)に心を動かされ、須崎が耀弘の遺産詐取を目論んで企てた“加菜子擬装誘拐”計画に協力し、加菜子の警護にあたっていた神奈川本部に「加菜子が柴田の血縁である」という情報を意識的に流した。
美馬坂研究所で“魍魎退治”を行うことにした中禅寺の指示で、(榎木津 礼二郎に強引に)研究所へ連れてこられ、謎を開示していく中禅寺の促しで彼女だけが知りうる“謎の部分”を告白することとなる。
全ての謎が開示されると美馬坂と共にその場から逃走を計り、それを制止した木場にメスで傷を負わすが、久保 竣公が美馬坂に襲いかかったことで逃走は失敗。美馬坂を助けようとして久保を絞め殺し、追って来た木場によってそのまま逮捕される。

参照作品:『魍魎の匣』
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