解説:
楠本 君枝 [くすもと きみえ]
楠本 頼子の母で、雛人形の頭造りを生業にしている人形師。
(人形作りは戦争中に身を寄せていた父の兄弟子から教わった。)
父は有名な人形師の末弟子で、腕も良く、若くして独立したが、博打好きで借金が嵩み一家は離散。19歳の時に結婚して頼子が生まれるが、子供嫌いの夫が暴力を振るうようになり頼子を連れて離婚、その後何人かの男に騙され辛酸を舐めるが如き日々を延々と送った。戦争中に身を寄せていた父の兄弟子は、面倒見は良かったが体を求められるようになり、(恩義からそれを拒めず)兄弟子の家族から罵倒を浴びせられ家を追われてしまう。
そのような過去から“家”に固執するようになり、定住できる家が欲しくて二人目の夫・直山 利一と結婚するが、頼子と利一は全く反りが合わず、そのことが母娘間に大きな溝を作ることになる。利一との離婚により住んでいた家を正式に手に入れた後もさらに頼子との関係は悪化、知り合いの笹川から『穢れ封じ御筥様』の噂を聞き、幸せを願って“御筥様”に喜捨するようになった。
しかし、(“御筥様”の教えに従うなら)幾ら喜捨をしても“家”を捨てない限り幸せにはなれず、「家を捨てることができない自分は死ぬしかない」と家の中で首を吊ろうとしていたところに榎木津 礼二郎と関口 巽が偶然訪問、榎木津の機転(関口を霊能者にでっち上げたペテン)により、君枝は娘・頼子のことが心配になって自殺どころではなくなり、結果的には自殺を思いとどまることになる。
頼子がバラバラ殺人の犠牲になって正気を失ったが、その後安定を取り戻し、家を売って高円寺のアパートへ引っ越した。