解説:
久保 竣公 [くぼ しゅんこう]
- 国分寺に住む、空間恐怖症の若手新進幻想小説家。
欠損した指を隠すため、いつも白い手袋を着用していた。
『武蔵野連続バラバラ殺人事件』の犯人。
父は箱屋の寺田 兵衛、母は寺田 サト。
幼少期、箱作りに没頭する父と鬱病の母から世話を放棄され、喜怒哀楽の感情を持たず口も利かない子供になった。
父・兵衛の出兵中に(事故か過失か)鉄の箱に挟まれ指を4本欠損してしまう。それをきっかけに狂乱状態になってしまった母・サトに連れられて家を出るが、サトは九州の山中で首吊り自殺し、残された竣公は修験者に保護され氏子だった老婦人に預けられた。老婦人は教養のある人物だったので、そこで暮らすうちに竣公は幼少期に欠落していたものを埋めることになる。
昭和25年に老婦人が亡くなると、遺産を相続して間もなく上京。父・兵衛の前に突然現れると、(箱屋に住みついて)これまでの自分の不幸を問わず語りに苛めの如く兵衛に聞かせ続けるようになり、それによって兵衛は心の均衡を失い、竣公の心の闇に魅入られ下僕と化し、その兵衛を利用して『穢れ封じ御筥様』は始まり、自分は黒幕となった。
ある日、(柚木 加菜子を連れて逃走中の)雨宮 典匡と偶然伊勢へ向かう列車の中で乗り合わせ、雨宮の持っていた(匣の中の)加菜子を見た竣公は「自分も“匣の中の娘”が欲しい」という欲求に取り憑かれる。そして、“御筥様”の住所録に載っている五十音順に若い娘を攫っては両手両足を切断、“匣の中の娘”を作ろうと試みるが、当然のことながら少女達はみな息絶えてしまい、巧くいかなかった。(ただし、久保自身が過去に指を切断されても生きていた事実から、本人は手足を切断することで少女達が死ぬとは考えておらず、殺意は全く無かった。)
ところが、4人目のターゲットと待ち合わせをしている喫茶店に関口 巽と榎木津 礼二郎が偶然立ち寄ったことから、自分の見た“匣の中の娘”の名前が“加菜子”であると知り、その“加菜子”の友人が4人目のターゲット・楠本 頼子だったことから、頼子をバラバラにする前に頼子の口から美馬坂 幸四郎についての情報を得ることとなる。
青木 文蔵率いる警察が自宅を捜査しに来た際に青木に怪我を負わせて逃走、生きている“匣の中の娘”を作る方法を教えてもらう為に美馬坂近代医学研究所へ行くが、そこで美馬坂博士から「君が犯罪者にならずに済む方法は君自身が被害者になることだ。」とそそのかされ、(また、自らも匣の中に収まってみたくなった久保は)そのまま生体実験の道具にされてしまう。しかし、その結果が自分の考えていた理想と異なることに気づいて激昂、中禅寺 秋彦の“魍魎退治”の場から自分を連れて(柚木 陽子と共に)逃げようとする美馬坂の首に噛み付いて美馬坂を殺すが、同時に、美馬坂を助けようとした陽子に首を絞められ死亡する。
- 中禅寺 秋彦によって葬儀が執り行われた。
- 道にたたずんで、いつもじっと柿崎写真館の不幸を見ていた。