百鬼夜行 ― 陰:各話の位置付け 戻る


 小袖の手
この話の主人公・杉浦隆夫は『絡新婦の理』に登場する連続絞殺犯である。
杉浦が犯行に及ぶに至った心理は『絡新婦の理』の中でも語られているが、この話によりさらに具体的に浮き彫りとなる。
また、杉浦の隣家の娘・柚木加菜子については『魍魎の匣』により明らかである。

参照作品:絡新婦の理 魍魎の匣
 文車妖妃
この話は『姑獲鳥の夏』で義弟を殺害した久遠寺涼子の一人称で語られている。
義弟殺害に至るまでの涼子の心境を、本人が語ることでよりリアルに感じられる短編。

参照作品:姑獲鳥の夏
 目目連
『絡新婦の理』に登場する連続目潰し魔・平野祐吉が最初の犯行に至った経緯を明らかにした話である。『絡新婦の理』の中で、最初の犠牲者・矢野妙子を殺害した経緯に関しての記述は皆無に等しいのでこの話は貴重である。
また、文中に登場する小坂という僧侶は『鉄鼠の檻』で最初に殺害された僧侶。
一見無関系に見える 『絡新婦の理』と『鉄鼠の檻』にそういう接点があったとは意外。

参照作品:絡新婦の理 鉄鼠の檻
 鬼一口
シリーズ初登場の人物・鈴木敬太郎が主人公。
この話で鈴木が町で偶然見かけたのは『魍魎の匣』の連続バラバラ殺人犯・久保竣公と被害者の1人・柿崎芳美である。
『魍魎の匣』では取り上げられなかった柿崎家と、生前の柿崎芳美の様子がうかがえる短編。

参照作品: 魍魎の匣
 煙々羅
『鉄鼠の檻』で起きた2つの大火事(松宮家放火事件・明慧寺火災)に関わった、箱根の消防団員の物語。
文中にはっきりとした記述は無いが、消防団員・棚橋祐介の兄嫁・和田ハツは 『鉄鼠の檻』で焼死した僧侶・和田慈行の血縁ではないかと想像される。

参照作品: 鉄鼠の檻
 倩兮女
『絡新婦の理』の連続目潰し魔の犠牲者の1人・山本純子に焦点を絞った短編。
その文体は純子の一人称で語られ、 『絡新婦の理』では今一つ不明瞭だった山本純子の姿が内面と共に明らかになる。

参照作品:絡新婦の理
 火間虫入道
その作品のボリュームに反し、殺人事件としては3件しか起きていない『塗仏の宴』。
その中の1件がこの作品の主人公・岩川真司によるものである。
『塗仏の宴』の黒幕的存在・藍童子に付け込まれた岩川の心の弱味が明らかになる。

参照作品:塗仏の宴
 襟立衣
『鉄鼠の檻』の舞台となった明慧寺の貫首・円 覚丹が明慧寺に入山する以前の物語。
この話に登場する牧村拓道が住職を勤めた真言宗系の寺院は『照山院』であり、拓道は『鉄鼠の檻』に登場する明慧寺の僧侶・牧村托雄の祖父であると推測される。

参照作品: 鉄鼠の檻
 毛倡妓
シリーズ中に度々登場する東京警視庁の刑事・木下圀治の話。
赤線取締まりからバラバラ殺人の捜査に駆り出されていることや、バラバラ殺人犯の家に踏み込む場面があることから、時間的には『魍魎の匣』の頃の裏話だと思われる。
また、『絡新婦の理』の中で青木文蔵が木下についてこの『毛倡妓』の話を示唆するような発言をしていることに注目。(ノベルスP.62 〜P.63)

参照作品:魍魎の匣 絡新婦の理
 川赤子
百鬼夜行/全シリーズの『プロローグ』とも言える短編。
『川赤子』最後の1行は、そのまま『姑獲鳥の夏』冒頭の1行に繋がっていると考えてよい。
 

参照作品:姑獲鳥の夏

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